2006年05月13日更新)


7. 湯破隊風雲録(土湯温泉編)


1.まえがき

湯破隊風雲録とは数年前に温泉仲間と一緒に廻った温泉の記録である。この湯破の記録は1999年から2000年にかけて、当時の温泉MLに投稿したものに若干のアレンジを施してここに転載するものである。

2.湯破隊とは?

まずは湯破隊を簡単に説明しておきたい。”とうはたい”と読む。”ゆはたい”ではない。メンバーは4人で全員温泉MLで知り合った仲間である。現在では一温泉地を舐めるように廻る人も多くなったが、以前はそういう風に温泉地を廻る人はほとんどいなかった。そういった中で湯破隊は一温泉地を徹底的に”湯破”するということを実践しそれなりにその後の温泉めぐりに影響を与えたのではないかと自負している。湯破することにより、それまで知られていなかったその温泉地の魅力を再発見するという役割を果たしていたと思う。

湯破隊・隊長は柳澤さんで、当時は体力があり(笑)毎週のように東京から鳴子温泉を日帰入浴していた偉大な温泉人である。東京・青森間の日帰り入浴を実現できればギネスものだったが、これはさすがに無理だったようだ。

一般隊員として赤塚さん、あらきさん、熊谷の構成。赤塚隊員は地図担当、あらき隊員は行程案作成担当、熊谷は書記担当であった。(笑)

温泉ML全盛期に温泉地を湯破してはその湯破の記録をメーリングリストに投稿して、それなりの反響を得ていたと思う。今回その当時のレポートをほぼ原文のまま掲載する予定であるが、あの異様に盛り上がったフンイキは望めないかも知れない。でも何となくあの当時の感じをつかめてもらえると嬉しい。(基本的に各温泉のレポートはHPの個別温泉レポートと同じものである。)

3.初湯破-土湯温泉編(1999年6月)

湯破隊の第一回目の湯破地として、土湯温泉源泉の宿探訪編をレポートする。湯破隊とは柳澤隊長が率いる、荒木、赤塚、熊谷の4人のメンバーで構成された温泉めぐりの専門集団である。(笑)今回は土湯温泉という一見温泉ファンが無視しがちな温泉地を敢えて踏破したが、予想以上の湯めぐりをすることができた。


土湯温泉「中の湯」大人:100円 AM6:00-PM10:00
源泉名:土湯温泉混合泉
泉質:単純温泉
泉温:60.8度C pH 7.3 成分総計 506.5mg/kg
色:無色透明 臭い:微土臭さ 味:微微甘味 ケロリン桶

土湯温泉街にある共同浴場。入浴券は温泉街のお店屋さんで購入する。お風呂は内湯×1。4〜5人が入れる四角い浴槽に熱めの湯が勢いよく注がれている。勿論湯が浴槽から溢れ掛け流し。お湯は無色透明で湯温がやや高温の湯だが特別な特徴はない。こげ茶色の湯の花もあり、混合泉とはいえ源泉そのままのようだ。約1ヶ月ぶりに入る温泉であったが、感激は今一つだ。タイル張りの小奇麗な浴室に地元の人たちが、ひっきりなしにやってくる。風呂として毎日入るにはこの手のがいいのかもしない。(1999/06/05/AM9:00)


土湯温泉「山水荘」 大人:600円(湯渡り手形使用) AM10:00-PM8:00
源泉名:土湯温泉混合泉
泉質:単純泉
泉温:58.8度C pH 7.3 成分総計 479mg/kg
色:無色透明 臭い:無臭 味:無味

代々土湯温泉の湯守を司ってきたという歴史ある温泉旅館だ。外観はおそろしく立派だ。しかし独自源泉を持ち湯守をするような旅館なので、単純泉の中の単純泉”King of 単純泉”に出会えるかと密かに期待していた。お風呂はたくさんあり、取りあえず6階!にある「瀧の湯」へいってみた。30人以上は入れる大きな湯船に無味無臭の循環湯が溢れていた。露天樽風呂もあるが湯が入っていない。「太子の湯」という渓流樽風呂にも行ってみたが、ここもお湯が張っていない。なんたることだ。最後に大浴場「つれづれの湯」へ行っ
てみると、ここは20人程度が入れる広さの、年季の入った浴室で湯が掛け流しになっている。ここの湯は循環はされていないようで若干の湯の臭いと黒っぽい湯の花があった。やっと温泉らしい湯に出会ったが、ここの湯に入るなら「中の湯」で十分だ。尚、以下の分析表が掲示してあったが該当する湯は発見できなかった。(1999/06/05/AM10:00)
源泉名:土湯源泉4号泉
泉温:75度C pH 7.6 成分総計 783.9mg/kg

土湯温泉「山根屋」 大人:600円(湯渡り手形使用) AM10:00-PM2:00(土)
源泉名:土湯源泉(2号#、旧井)湯
:(福島市土湯町字湯畑1番地の2)
泉質:単純温泉
泉温:48度C pH 7.89 成分総計 719.9mg/kg
色:無色透明 臭い:薄アブラ臭 味:微アブラ味 ケロリン桶

ちょっと高級系の温泉旅館で循環&濾過を予感させたが、果たして結果はいかに?お風呂は内湯×1と露天×1。内湯は変形アメーバ形の湯船でお湯が掛け流しになっている。無色透明の湯ながら茶褐色の湯の花も多く、またちょっと石油臭い臭いもある。多分源泉100%の湯だと思われ、嬉しくなった。湯の感触はとりたてて特色のあるものではないが、浸かるほどに心地よくじっくり浸かりたくなる。露天はお湯を溜めている途中で、入ることは出来なかったが屋根付きで展望はよない。帰り際に家族風呂として使用されている「上の湯」を発見。おそらく源泉の上かすぐそばに造られていると思われ、4〜5人が入ればいっぱいになる広さの素朴で素敵な浴槽だ。そして湯がまた良い!微白濁でアブラ臭も十分にあり、ここが土湯であることを忘れさせてくれる。肌触りは肌に良くなじむ感じで、湯の成分を感じることができる。しかし、濃いという感じではない。ここでは思いっきり湯に浸かり、浴室中に漂うアブラ臭を嗅ぎながらトドになってしまった。(1999/06/05/AM10:30)


土湯温泉「木村屋旅館」 大人:500円 AM11:00-PM4:00
泉質:含硫黄-ナトリウム・炭酸水素塩・塩化物泉(硫化水素型)
泉温:63.5度C
色:薄白濁 臭い:アブラ臭 味:薄アブラ味

外見はさほど鄙びていない中規模の旅館。お風呂は混浴の岩風呂と男女別の大浴場がある、今回は岩風呂でお湯を借りることにした。暗い階段を降りていくと岩風呂はある。浴室に入った途端にアブラ臭がする。浴室の感じは東鳴子の高友旅館の黒湯を彷彿させるものだ。浴槽の造りも似た感じがする。浴槽の川側の方から自噴しているらしいが、確認はできなかった。湯は薄く白濁しており、湯に浸かった途端湯が皮膚に纏わりつくような感覚がある。湯の感じは何とも柔らかく入り心地の良いものだ。やや湯の鮮度に欠けるような気もするが、何度も出たり入ったりしていると、えもいわれぬ心地よさに思わずトドになってしう。湯の臭いといい、浴室の雰囲気と言い私の大好きな東鳴子に似ていたので、気に入った。8000円から宿泊可能だそうだ。(1999/06/05/AM11:30)


土湯温泉「富士屋」 大人:500円 AM11:00-PM5:00
(不老の湯)
泉質:単純硫化水素泉
色:無色透明 臭い:薄アブラ臭 味:無味

自噴風呂が自慢の旅館。中々立派な門構えだ。お風呂は「不老の湯」「長寿の湯」「鶺鴒の湯」の3つがあり、今回訪れた時は男湯は「不老の湯」だけだったので、ここのみのレポートとなる。「不老の湯」のある浴室には2つの浴槽がある。一つは入って直ぐのところにある。大きな2本の打たせ湯があり湯が豪快に掛け流しになっている大浴槽。ここは単純泉のようだ。大浴槽の側の階段を地下に降りていくと総桧造り(多分)の自噴浴槽がある。
これが「不老の湯」で、わざわざ名前を付けるほどの価値のある立派な浴室、浴槽だ。泉質は単純硫化水素泉ということだが、ほとんど単純泉と言って良く、薄くアブラ臭のする無色透明の軟らかな湯だ。さて自噴を確認してみると、浴槽の底の一部金属で覆われた所に一円玉ぐらいの穴が幾つか空いており、そこから源泉がこんこんと湧き出ているようだ。さらに腰板の隙間からも熱めの湯がじわりじわりと染み出ている。浴槽の雰囲気といい、湯の新鮮さ・みずみずしさといい満足できるものだ。若干の加水はこの際湯の濃さには影響しないのでよしとする。小型「蔦温泉」といったところか。今回は入れなかったが、「長寿の湯」の湯も自噴風呂でこちらには濁り湯の重曹泉が湧いているらしい。写真で見る限りとっても良さそうであった。(1999/06/05/PM1:00)

時間があったので土湯以外の温泉も廻ってみた。


信夫温泉「信夫温泉」
大人:500円 
泉質:単純硫化水素泉(緊張性低調泉)
泉温:36.3度C pH 8.4 成分総計 569.9mg/kg
色:無色透明 臭い:無臭 味:無味

以前から気になっていたが、日帰り入浴不可という情報が流れていたため、なかなかあの吊り橋を渡る勇気がなかった。しかし最近になり入浴可ということが判明し訪れてみた。吊り橋を渡って宿に行くという抜群のロケーションだ。旅館自体はよく手入れされており、鄙びた雰囲気はない。お風呂は2ヶ所にあり、「宝泉の湯」「開運の湯」と名づけられている。「宝泉の湯」は四角いタイル張りの浴槽で6〜7人が入れる広さ。湯が掛け流しになっており、浴室の所々が黄色く変色していてかなり多くの湯の花が舞っているのが目
立つ。浴後のポカポカ感はそこそこ残る。「開運の湯」も5〜6人が入れる円を基調としたタイル張りの浴槽。ただ、明らかにこちらに張られている湯は、「宝泉の湯」の湯よりも薄くあまり成分を感じられるものではない。(1999/06/05/PM2:00)


高湯温泉「旅館ひげの家」 大人:500円 PM0:00-PM3:00
源泉名:高湯温泉「仙気の湯」
:(福島市町庭坂字高湯16番)
泉質:酸性-含硫黄-カルシウム-硫酸塩温泉(酸性硫化水素泉) 
泉温:47.4度C pH 2.8 成分総計 1,569mg/kg
色:青み白濁 臭い:硫黄臭 味:酸味

久々の高湯温泉だ。最近評判の良い「ひげの家」の湯を借りることにした。お風呂は内湯×1と露天×1(貸切り可)。今回訪れた時は露天は貸切り中で、内湯にのみ入湯。浴室に入った瞬間ちょっぴり驚く。浴室はすべて真新しい木で出来ており、勿論浴槽も木製でまだ改築して日が経っていないのか木の色も新しい。木の臭いと硫黄の臭いが微妙にブレンドされており、鼻孔をやさしく擽ってくれる。浴室の約1/4が浴槽となっているため、浴室が広々した感じがする。浴槽は7〜8人が入れる四角いもので白濁のやや青みがか
った湯が溢れている。濃いと言う感じの湯ではないが、久しぶりの本格硫黄泉に出会いとても気に入った。少しだがぴりりとした感触もある。そして何よりも湯量と浴槽の大きさのバランスが良いので新鮮な源泉を常に味わうことができる。料理もいいらしいので一般受け必至の宿と言えると思う。(1999/06/05/PM3:00)


岳温泉「アークホテル」 大人:1000円(700円) 時間は要相談
源泉名:岳温泉・元湯(岳温泉株式会社)
泉質:単純酸性泉(低張性酸性高温泉)
泉温:58.3度C pH 2.4 成分総計 723.7mg/kg
色:やや青み無色透明(白い湯の花が舞うと白濁)臭い:微硫黄臭 味:酸味

湯が良いという噂を聞き込み確認のため行ってみた。外観を見る限りハズレを予感させる。お風呂は内湯×1と露天×1。受付の女性の案内でエレベーターでB1へ。内湯は30cmぐらい湯口から湯が噴水のように吹き上げており、湯量豊富で豪快に掛け流しになっている。白い湯の花も浴槽の底に沈殿しており濾過していないような印象を受けた。湯はピリリとくる引き締まった感じがし、入浴感はそこそこある。しかし成分はさほど感じないものだ。入った瞬間熱い感じもするが、慣れるとそうでもない。露天は浴槽の縁が桧でできているが、展望は期待できない。浴槽の底にかなり白い湯の花が堆積していたので、足で掻きまわし白濁の湯にして雰囲気を高めてみた。これはこれでとても良い。硫黄臭がほとんどないのが惜しいが、どうやら岳温泉の源泉を循環も濾過も加水もせず使用しているようで非常に好感が持てた。岳温泉と言えば、「岳の湯」へ行く人も多いと思うが、そこの湯とはまったく別物と言っていい湯なので、岳温泉でどこか一湯といったら「アークホテル」 をお勧めする。(1999/06/05/PM4:00)

第一回目の湯破であったがあの土湯温泉でアブラ臭の温泉を発見できるとは想像だにしなかったことだ。これは温泉史に残る偉大な発見の一つかもしれない。(笑)さて次回はどこを湯破することになるかわからないが今から楽しみである。

(注)1999年6月時点のレポートであるが、その後廃業あるいはお湯が変わってしまった施設があるようである。これを読んで訪問を企画される方は十分に注意されたい。


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