二岐温泉湯破・湯破隊復活編(2006年9月)
1.プロローグ
某月某日、都内芒硝にて。
白髪の混じる中堅のサリーマン風の4人がテーブルに向き合い酒を酌み交わしている。他人からは会社の悪口でも言って盛り上がっていると思われたかもしれないが、実はふかーい温泉の話題で盛り上がっていたのだ。
柳澤隊長「そろそろ本題に入ろう。数年ぶりに4人が勢ぞろいできて嬉しく思う。各隊員ともいろいろ温泉力を高めてきたことと思うが、ここに公式に湯破隊を復活したいと思う。」
全員「賛成!」
柳澤隊長「そこで久しぶりの湯破だが最初の湯破をどこにするかを決定しよう」
「最近歳のせいか熱い湯が苦手なので、ぬるいお湯にしよう」
「だったらアワアワか足元自噴がいいなあ」
「関東から遠いのも疲れるね」
「宮城・山形なら平気なんじゃない?」
「いや、遠すぎぎる。北限は福島ですね」
「しかも日帰りはNGですよ」
「やっぱり宿泊してマターリとしないとね」
「宿泊するにしても高いのは嫌よ」
「うーん、どこにしますかねえ?」
結局、比較的近場でまたーりとできる所で湯破隊がまだ行っていないところから、いろいろ捜した結果福島県南部の温泉巡りをするということになった。他の湯破隊のメムバーはこの地域はポツポツと訪れているようだが、私は全く未湯の地域だなのでとてもラッキーであった。
ただ湯破直前になり柳澤隊長の体調が思わしくなく、今回の復活湯破隊のイベントに急遽参加できなくなってしまったのは返す返すも残念なことであった。
2.湯破1日目
湯破隊員の朝は早いとうのが定番であったが、なんと今回はあまり早くなかった。(笑)しかも途中までは新幹線で行くという楽チンな行程だ。やはり柳澤隊長の湯破専用高級リムジンが使えないのが痛い。
新白河駅で赤塚隊員にピックアップしてもらい、あらき隊員と3人そろいいざ出発だ!赤塚隊員の新車にはじめて乗せていただいたがカーナビが着いているのにびっくり。赤塚隊員はガチガチの地図派だったのだ。山口百恵と吉田拓郎のBGMを大音響で聞きながら、記念すべき復活第一湯を目指す。
甲子温泉「旅館大黒屋」大人:630円 AM9:30-PM5:00
泉質:カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉
色:無色透明 臭い:薄石膏臭 味:微苦味+微渋味
甲子温泉「大黒屋」は至徳年間(1384年)州安和尚によって発見されたとても古い温泉だ。有名な大浴場「大岩風呂」(混浴)は階段をかなり降りていった渓流沿いにある。この大きな湯小屋が素晴らしい。こんなに大きいにもかかわらず脱衣所一体型なのだ。うひょーってな感じ。20人以上は楽に入れる大きな浴槽がどんすんと浴室の真ん中に鎮座している。天井も高くフンイキは抜群に良い。お湯は綺麗に澄んだ無色透明でややぬるめのとろーりとしたものでナントモ言えないくらい心地の良いお湯だ。浴槽の底は川底をそのまま改造して作ったような感じで大きな石がごろんとある。底の1ヶ所に小さな穴が開いておりそこから時折ポロロンと湯玉が駆け上ってくる。ひょっとして足元自噴か?天井からぶら下がっている裸電球の下、深夜にこのお風呂に入ったらさぞかし雰囲気が素晴らしいのだろうなあ。(2006/09/02/AM9:30)
新甲子温泉「みやま荘」 大人:800円 AM10:00-PM7:00
源泉名:五峰観光株式会社
泉質:ナトリウム-硫酸塩-塩化物・炭酸水素温泉
泉温:70.0度C pH:7.2 205L/M
色:微黄色味透明/薄茶褐色濁 臭い:薄芒硝臭 味:鉱物味
甲子温泉の手前にある新興の温泉地にある温泉。ここと本館の「五峰荘」は独自源泉を持っているとのことで訪れてみた。お風呂は内湯×1と露天×1。内湯は10〜12人くらいが入れる広さのもので、薄く黄色味がかったお湯が掛け流しになっている。お湯は少しぬるつる感があるものの、やや硬い感じのするものだがお湯の成分が皮膚に伝わってくるような感じもして入浴感は良い。露天は10人くらいが入れるもので、こちらのお湯の色は茶褐色だ。ただ浴槽が異常なまでに浅くできており浸かった感じがしないのが惜しい。あまり期待していなかったが、久しぶりに力強さのある芒硝泉に浸かったような気がする。(2006/09/02/AM11:00)
二岐温泉「大丸あすなろ荘」大人:735円 AM11:00-PM2:30
(自噴泉岩風呂)
源泉名:二岐温泉10号泉岩風呂
泉質:カルシウム-硫酸塩泉(アルカリ性低張性高温泉)
泉温:53.8度C pH:8.8 成分総計:1,314mg/kg 54L/M
色:無色透明 臭い:薄湯の香 味:微石膏味
(渓流露天風呂)
源泉名:二岐温泉(4号泉、5号泉、6号泉、12号泉の混合)
泉質:単純温泉
泉温:45.4度C pH:7.0 成分総計:851mg/kg
色:無色透明 臭い:微石膏臭 味:微石膏味
「秘湯を守る会」の会長の宿として有名な旅館。さすがに超有名な”秘湯”だけありとても立派だ。お風呂は3ヶ所に分かれており、本館内には立派な内湯とそれに続いた露天風呂がある。ここは極普通の感じで取り立てて良いとは思えない。ここの旅館の評価を高めているのが、自噴泉岩風呂だ。本館から渓流の方へ降りていく途中に目指す湯小屋はある。まだ新しい感じはするものの、本格的な湯小屋造りで外観を見ただけでも嬉しくなる。そしてその内部も素朴で鄙びた共同浴場のフンイキを漂わせたもので素晴らしい。お風呂は10人くらいが入れる広さ。
お湯の注ぎ口がないのに無色透明のお湯がザアザアと掛け流しになっている。ここはかなり熱めのお湯で、なかなか長湯はできないがお湯の感触はやはりスバラシイの一言だ。ちょっとのぬめり感と清廉さの兼ね備わったお湯は本当に浸かっていて心地が良いことこの上ない。温泉が自噴している川底の上に浴槽が作られたような感じで、浴槽の底は天然の石や岩がそのままある。その岩の裂け目から熱めの源泉が湧き出ているようだが、時折湯玉も駆け上ってくる。やはり足元自噴はいい。露天は2つあり奥にあるのは小さくてかなりぬるいもの。手前側が適温でとても入り心地が良い。渓流に面し、水が急流を流れ落ちていく音と眩しいくらいの緑の木々を眺めながら入る露天は悪かろうはずがない。(2006/09/02/PM1:00)
二岐温泉「大和館」大人:500円 AM10:00-PM3:00
源泉名:二岐温泉
泉質:石膏泉(緩和性低張性高温泉)
泉温:52度C 成分総計:1,764.1mg/kg
色:無色透明 臭い:微石膏臭 味:微石膏味
二岐温泉の渓流沿いにある旅館の一つ。一見鄙びておりやる気のなさそうな感じがするが、内部は鄙びておらずなかなか立派でやる気十分のようだ。(笑)お風呂は階段をずっと降りた所にある。内湯×1と離れた所に露天×3。内湯は打たせ湯のようなお湯が一本豪快に浴槽に注がれている。浴槽のお湯はややぬるめで、ぬめり感が結構ありぬるりとする感触で肌触りは良い。優しい感じのお湯でまずまずのもの。露天は渓流を挟んで手前に2ヶ所橋の向こう側に1ヶ所ある。橋を渡ったところにある露天はなかなかのロケーションで、露天風呂好きにはたまらないつくりだ。お湯の感じはどの露天風呂もほとんど一緒でぬめり感のある肌触りの優しいもの。川面を渡る涼しい風に打たれながらのんびりお湯に浸かり続けることができる。そんなに露天風呂好きではないが、こういうのはいい。(2006/09/02/PM2:30)
二岐温泉「湯小屋旅館」大人:500円
泉質:カルシウム-硫酸塩泉
色:無色透明 臭い:石膏臭 味:微石膏味
つげ義春の漫画で有名な「湯小屋旅館」を訪れてみた。現在は経営者が変わり、若い人が週末のみ滞在して管理をしているようだ。昔はかなり鄙びまくっていたらしいが、今回訪れたときはあちこち改修されており、かなり”普通”の施設になっていた。お風呂は内湯×1と露天×2。内湯は7〜8人が入れる広さのもので、やや熱めに感じるお湯が張られている。お湯は少しだけとろーんとした感じのものだが、すっきり感もあり肌触りも柔らかな感じのするもの。湯小屋のフンイキは地モ専チックでなかなか良いものがある。露天は2ヶ所あり1つは5〜6人がもう1つは2人くらいが入れる広さ。小さい方はぬるめで川の直ぐそばにある。ここの露天も自然観溢れたもので川面を渡る心地よい風と川のせせらぎ、それとまだまだ緑の濃い木々を眺めながらとっぷりとお湯に浸かることができる。(2006/09/02/PM3:30)
二岐温泉「柏屋旅館」(宿泊)
源泉名:二岐温泉9号温泉
泉質:単純温泉
泉温:34.8度C pH:8.0 成分総計:883.2mg/kg
源泉名:二岐温泉14号温泉
泉質:カルシウム-硫酸塩温泉
色:無色透明 臭い:薄石膏臭 味:微石膏味
二岐温泉にある中規模の温泉旅館。今回は二岐温泉湯破の秘密基地としてここに宿泊だ。ここの宿も「大丸あすなろ荘」と同じように足元自噴の自家源泉を持っている。お風呂はそれぞれ離れた場所に内湯×1、岩風呂×1(混浴)、露天×1がある。内湯は10人くらいが入れる広さでややぬるめに感じるお湯が張られている。少しだけとろみ感のあるやさしい肌触りのお湯で入浴感はなかなか良い。露天風呂は川を渡った所にある。4〜5人が入れる岩風呂風のお風呂が渓流沿いに造られている。蚊帳がちょっと邪魔だが川面を渡ってくる風が心地よい。お湯はやや熱めに感じるもので入り心地はかなり良い。灰色の湯花が少しだけ舞っている。
岩風呂は本館から少しだけ離れたところにあり、ここだけ混浴。ナントモフンイキの良い浴室でお湯に浸かる前からふうーっと溜息が出てしまう。しかしお湯の注ぎ口がないにも関わらず浴槽からお湯が溢れ掛け流しになっている。お風呂は10人くらいが入れる広さで天然の岩をくり貫いたような感じのものでかなり深く中腰で入ることになる。湯温はやや熱めに感じるもので入った瞬間にピリリとくる感じがする。無色透明でとても鮮度感溢れるお湯の勢いに圧倒されてしまう。うーん、気持ちがいい!浴槽の横の岩の割れ目から熱めの源泉が吹き出ている。時折熱めの湯玉がポロロンと湧き出てくる。足元自噴泉特有の新鮮さ溢れるお湯に浸かっていると身体中の皮膚がゆっくりお湯の中で深呼吸をしているような感じがしてしまう。今回は宿泊したが料理はまずまずの内容だったが、食事処がカラオケ常備になっており他のお客さんがカラオケに高じる中黙々と食事するのはちょっと”アレ”なものがあった。(笑)しかし、ここの岩風呂はスバラシイ。宿泊代もあまり高くはないので、今度は違う季節に宿泊で訪れてみたいと思う。(2006/09/02/Deepest Midnight)
3.湯破2日目
岩瀬湯本温泉「湯口屋」大人:500円 AM9:30-PM3:30
泉質:含食塩土類食塩泉
色:微白濁 臭い:薄硫黄臭 味:薄鉱物味
岩瀬湯本温泉にある老舗旅館。茅葺の家が何軒かあり、その中の一軒が「湯口屋」だ。良く考えてみると凄い名前だと思う。(笑)こういう素敵な名前を持っているにも関わらず、今まで訪れなかったことを反省。こお風呂は玄関の真横にあるという不思議な造りで、ちょうどその前に地モ専があるので浴室同士が隣り合っている感じ。お風呂は内湯×1。7〜8人が入れる広さの浴槽に微白濁気味のお湯が張られている。お湯は最初熱く感じるが、浸かっていると段々慣れてくる。お湯の肌触りはぬるつる感はないもののかなり浸かり心地の良いもので思わず、おーっと声出てくるほど気持ちがいいものだ。湯口付近からは硫黄臭が香り、湯口付近で浸かっているととてもいい感じ。浴室の天井が低く湯気がこもりがちなのが惜しいといえば惜しい。(2006/09/03/AM09:30)
湯野上温泉「温泉民宿舘乃湯」大人:500円
源泉名:舘本混合泉(1,2,3,5,6,7,8号混合泉)
泉質:単純温泉
泉温:53.3度C pH:8.2 成分総計:418.3mg/kg
色:無色透明 臭い:ほぼ無臭 味:ほぼ無味
湯野上温泉にある規模が大きめの温泉民宿。屋根にでかい看板が出ており、つい吸い寄せられるように立ち寄ってしまった。(笑)お風呂は内湯×1と露天×1。内湯は4〜6人が入れるタイル張りの浴槽に無色透明のお湯が溢れている。お湯は浴槽の下から勢いよく出ている。ちょっと熱めに感じるお湯で入った瞬間熱いと感じるが浸かっているとそうでもない。あっさりしたさっぱりめのお湯で特別な特徴はないがお湯の鮮度はかなり良い。露天はかなり大きく、変わったオブジェが飾ってある。こちらは内湯よりはぬるめになっており、やさしい肌触りでさっぱりした浴感。陽光がまぶしいくらいでお湯がきらきら輝いて見える。明るい日差しが溢れる中かわいいオブジェを眺めながら入る露天も悪くない。(2006/09/03/AM10:30)
さすがに無色透明の単純温泉チックなものばかり続いたので、硫黄泉が猛烈に恋しくなりとりあえず塩原方面を目指すことにした。喜連川早乙女温泉も激しく私を呼んでいるような気もしたが、帰る方向のこともあり塩原の元湯温泉に行くことに決定した。
元湯温泉「えびすや旅館」
久しぶりの「えびすや旅館」だ。もっと鄙びた印象が残っていたが随分と小奇麗な感じだ。前日にTVで紹介されたとかで、日帰り入浴は大賑わいだ。こんなにお客さんがいるのをはじめて見たような気がする。(失礼)浴室も浴槽もしてお湯もまったく以前と変わっていない。やっぱり落ち着きますねえ。ぬるめのお湯にとっぷりと浸かり硫黄臭を補給する。うーん、やっぱりいなあ。アブラもいいけど硫黄もね!って感じですかね。(笑)
そして時間が少しあったので栃木県の新興温泉の中からちょっと気になるものをチョイスして訪れてみた。たくさんあるので選ぶのにちょっと苦労。
佐久山温泉「きみのゆ」大人:600円 AM10:00-PM9:00
源泉名:佐久山温泉
泉質:含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(弱アルカリ性等張性高温泉)
泉温:55.0度C pH:7.9 蒸発残留物計:9,329mg/kg(Fe:9.3,HS:3.9)
色:暗黄色味透明 臭い:微臭素崩れアブラ臭 味:微塩味
栃木県の新興温泉の中では比較的評判の良い佐久山温泉を訪れてみた。分析表のスペックがなかなかなのだ。源泉の説明文を読んで更に期待が高まる。「黒褐色に混濁し硫化水素臭と塩味を有する」なんて書いてあるからねえ。外観は大きくて立派なセンター系の施設。お風呂は内湯×2と露天×1。内湯は20人くらいが入れる大きなものと4〜5人が入れるものとがある。大浴場はお湯が勢いよく注がれており、湯口付近ではかすかに臭素臭崩れのアブラ臭が感知できるがとても微弱なレベル。期待した硫黄臭はまったく感知できない。お湯はぬるつる感のあるとても肌触りの良いもので新興温泉としてはまずまずだと思う。露天は10人くらいが入れるもので内湯よりも少し濃い感じがするが、お湯がややなまっており鮮度はあまり良い感じはうけなかった。(2006/09/03/PM2:30)
4.エピローグ
楽しかった1泊2日の復活湯破もあっという間に過ぎてしまい、渋々帰宅の途につく。しかし、ホント皆さん私を含めて歳をとってしまい昔のような温泉に対する貪欲さのようなものが薄くなっているような気がした。以前なら見知らぬ温泉の看板を見つけると玉砕覚悟で突入したものだが、今回はあっさりパスしてたからねえ。(笑)まだ温泉パワーが復活してないのかな?
今回の湯破はやはり柳澤隊長が不在ということもあり、何となくしっくりしないものになってしまった。次回は必ず4人で湯破しまくるぞ!
|